遺言事項
遺言は、その方式を守っていれば、どのような内容であっても構いません。ただし、法的に意味をもつのは下記の事項に限られます。
身分に関する遺言事項 |
1.子の認知 |
2.未成年者の後見人の指定 |
3.後見監督人の指定 |
相続に関する遺言事項 |
1.推定相続人の廃除/廃除の取消 |
2.相続分の指定/指定の委託 |
3.特別受益の持ち戻しの免除 |
4.遺産分割の方法の指定/指定の委託 |
5.遺産分割の禁止 |
6.遺産分割された財産について相続人同士で担保責任を負わせること |
7.遺贈の減殺の順序/割合の指定 |
遺産処分に関する遺言事項 |
1.遺贈 |
2.財団法人設立のための寄附行為 |
3.信託の指定 |
遺言執行に関する遺言事項 |
1.遺言執行者の指定/指定の委託 |
2.遺言執行者の職務内容の指定 |
その他の遺言事項 |
1.祭祀承継者の指定 |
2.生命保険金受取人の指定/変更 |
3.遺言の取消 |
遺言と子の認知
嫡出でない子に対し、その父母は遺言によっても認知をすることができます。遺言による認知の場合には、遺言執行者がその就職の日から10日以内に認知に関する遺言の謄本を添付してその届出をしなければなりません。ですから、遺言を作成するにあたり、遺言執行者を指定しておくことが肝要です。遺言執行者の指定がない場合は、家庭裁判所にその選任を求めることになります。
これに対し、子、その他の利害関係人は、認知に対し反対事実を主張することができます。この主張は、家事調停、これが成立しない場合は認知無効確認または認知取消の訴えによって行われます。
推定相続人の廃除
被相続人に対する虐待、重大な侮辱、著しい非行があり、相続人に自身の財産を相続させたくない場合には、相続人の廃除の手続きをとることができます。
相続人の廃除は被相続人が生きている間に家庭裁判所に対して手続をとるか、遺言でできます。遺言で廃除する場合は、被相続人が死亡後、遺言執行者が家庭裁判所に対し廃除の請求をします。 廃除された者は、相続人になれず、遺留分の主張をすることもできません。ただし、推定相続人の排除が認められるには、社会的・客観的に正当化されるだけの事情が必要です。
遺産分割の禁止
遺言者である被相続人は、相続開始の時から5年を超えない期間、遺産分割を禁止することができます。遺言者は、その有する遺産全部について分割を禁止することもできますし、特有の財産に限って、その分割を禁止することもできます。例えば、先祖伝来の土地を守りたいときや、未成年の子どもが成人するまでは遺産分割を待って欲しいなどの希望があるときには、その旨の規定をいれることができます。
祭祀承継者の指定
祭祀の主宰者は、第一次的には被相続人の指定により、指定がない場合には慣習によって決まるとされています。誰が祭祀を主宰すべきか相続人間で争いになりそうな場合には、遺言でこれを指定しておくべきでしょう。なお、慣習でも明らかにならない場合には、家庭裁判所が祭具等の承継者を定めることになります。
遺言と遺留分減殺請求
被相続人は、遺言をするにあたって、推定相続人の遺留分を侵害しないように配慮する必要があります。もっとも遺留分を侵害する遺言書を作成すること自体は違法ではなく、当該部分が当然に無効となるわけではありません。
被相続人に対する虐待、重大な侮辱、著しい非行があり、相続人に自身の財産を相続させたくない場合には、相続人の廃除の手続きをとることができます。相続人の廃除は被相続人が生きている間に家庭裁判所に対して手続をとるか、遺言でできます。遺言で廃除する場合は、被相続人が死亡後、遺言執行者が家庭裁判所に対し廃除の請求をします。 廃除された者は、相続人になれず、遺留分の主張をすることもできません。ただし、推定相続人の排除が認められるには、社会的・客観的に正当化されるだけの事情が必要です。
このような事情がない場合には、他の相続人が遺留分減殺請求をしないよう理由等を付記して、遺言者が相続放棄を希望していることを明記し、他の相続人の理解を得られるようにする必要があります。もっとも、この遺留分の放棄の依頼に法的拘束力はありませんし、この記載をめぐり、かえって相続人間で争いになることもありますので、注意が必要です。