まずは遺産の範囲を確定を
遺産分割協議が長期化する典型例として、分割対象財産を明確にしないまま協議している場合が挙げられます。分割対象財産が不明確なままに協議を続けても、相続人同士の感情論も混ざり合い、議論がかみ合わず、議論が空転し続ける結果となります。
遺産の範囲を定める基準時
遺産分割の対象財産を定める基準時をいつにするかについては争いがあり、大きく、相続開始説と遺産分割時説に分かれます。実務上は、遺産分割時説が取られています。したがって、正確に言えば、遺産分割の対象となる遺産は、①相続開始時に存在し、かつ、分割時にも存在する、③未分割の遺産ということになります。
遺産が相続開始後に滅失してしまった場合には、遺産分割の対象とはなりません。相続人が勝手に遺産の一部を処分してしまった場合、売却代金が発生しますが、これは遺産の代償財産ではありますが、厳密には、遺産分割の対象とはなりません。
相続財産調査の目安
相続財産を探す目安として、まず、プラスの財産(積極財産)、マイナスの財産(消極財産)が有ります。積極財産の具体例は、被相続人の不動産、預貯金、有価証券があります。これに対し、消極財産とは、被相続人の債務・借金を言います。
積極財産調査の目安
プラスの財産(積極財産)を調査する目安としては、①不動産、②動産、③預貯金、④債権、⑤有価証券が挙げられます。
調査対象 |
調査事項・調査方法 |
①不動産登記簿謄本 ②固定資産税納付通知書 ③公図 |
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動産 |
絵画、骨董、宝石等 |
①預金通帳 ②取引明細書 |
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債権(貸金) |
契約書等 |
有価証券 |
株式 社債・投資信託 ゴルフ会員権 |
消極財産
被相続人の消極財産(借金・損害賠償債務等)も相続財産に含まれます。消極財産の方が積極財産より多い場合には、限定承認や相続放棄をすることも考えられますが、申述期間に制限がありますので、注意が必要です。
相続財産に属さない財産・権利
被相続人の財産の中には、相続人に承継されないものもあります。