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合意の活用

遺産分割調停・審判においては、遺産評価について、相続人間の合意を活用するよう運用されています。

(1)不動産

相続財産に不動産がある場合、地方税法上の固定資産税評価額、相続税法上の評価額(路線価)などの指標によるほか、大手の不動産業者による売却の査定を取り、これらの評価資料を踏まえ、相続人に合意を促されます。

(2)株式

株式のうち非上場株式は、一般的な評価が困難なため、相続税申告書の評価額などを参考に合意の形成を図る運用がなされています。

合意の対象

合意の対象は、評価額以外に、預貯金の残高の基準時なども対象となります。特別受益、寄与分が問題となる場合、相続開始時と分割時の2時点の評価を要しますが、例えば、2時点のいずれも、相続開始時又は現時点での同一額で合意するといった基準時に関する合意も可能です。

また、不動産鑑定士、公認会計士などの専門的知見を有する専門委員に対し、評価に関する意見を求め、それに基づき、合意する方法があります。ただし、専門委員の活用は例外的であり、最低限、専門委員の意見には必ず従うとの当事者全員の合意が必要となります。他方、紛争性が高い場合や物件が多数の場合、専門委員の利用ではなく、鑑定を利用します。

なお、合意が成立した場合は、遺産の範囲と同様に、期日調書にその旨を残します。

鑑定

鑑定は、対象財産につき、専門的知見を有する鑑定人を選任し、宣誓の上、評価を命じ、これを行わせる事実調査の手続をいいます。鑑定する場合、相続開始時か、鑑定時かといった基準時を確定し、対象物件の状況を踏まえ、条件を明確にする必要があります。例えば、不動産の評価において、借地権などの不動産利用権が付着している場合、減価を要するので、賃貸借契約書などの資料の提出が必要となります。不動産利用権の存否が争いとなる場合、前提問題の紛争となるため、その解決が図られない限り、評価できないことがあります。株式の鑑定の場合、あらかじめ、前提となる会社の資産の評価を行わなければならないこともあります。

 また、鑑定を採用する前に、裁判所の鑑定による以上、その結果を尊重する、又はこれに従うよう当事者に対し理解を求める運用がなされています。

実務上、当事者に鑑定費用を予納させ、その後、鑑定を採用する。そこで、事前に、鑑定人候補者に対し、鑑定費用の見積を依頼し、その提示を受けて、当事者に説明し、費用負担の合意を取り付け、予納させています。

鑑定に関する実施の条件、費用負担、鑑定結果に従う旨の当事者の意見等も、できる限り、期日調書に残すようにしています。


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