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遺産である建物の相続開始後の使用について被相続人と相続人との間に使用貸借契約の成立が推認される場合 最判平成8年12月17日

事 案

() Dは昭和63年9月24日に死亡した、() 被上告人B1はDの遺言により16分の2の割合による遺産の包括遺贈を受けた者であり、上告人ら及びその余の被上告人らはDの相続人である、()本件不動産はDの遺産であり、一筆の土地と同土地上の一棟の建物から成る、() 上告人らは、Dの生前から、本件不動産においてDと共にその家族として同居生活をしてきたもので、相続開始後も本件不動産の全部を占有、使用している。

上告人らは本件不動産の全部を占有、使用しており、このことによって被上告人らにその持分に応じた賃料相当額の損害を発生させているとして、上告人らに対し、不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求として、被上告人ら各自の持分に応じた本件不動産の賃料相当額の支払を求めるものである。

争 点

自己の持分に相当する範囲を超えて不動産全部を占有、使用する持分権者は、これを占有、使用していない他の持分権者に対して、共有物の賃料相当額に依拠して算出された金額について不当利得返還義務を負うか

判 旨

共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。

理 由

建物が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえる

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