どうして相続税対策に贈与が有効なのか
相続税対策として贈与が用いられることは少なくありません。贈与による相続税対策の目的は、「相続発生前に資産を推定相続人に移転することで、相続時における資産の絶対量を減らすこと」にあります。こうすることで、将来負担すべき相続税額を減少させることできます。
贈与による相続税対策のメリット・デメリット
1 メリット
(1)贈与した財産は、その後相続税評価額が上昇も、その上昇による影響を受けない。
(2)財産の移転先を被相続人の意思で決めることができる
(3)孫への贈与で、1回分の相続税課税を回避できる。
2 デメリット
(1)贈与税負担率が相続税負担率より高くなることを避けるためには、中長期的な計画が必要となる。
(2)相続開始前3年以内に行われた贈与について「生前贈与加算」があるので、場合によっては、加算対象とならない人物(推定相続人以外の人】に対する生前贈与も検討する必要がある。
贈与の前に検討しておくべき事項
相続税対策として贈与をするに辺り、検討しておくべき事項としては、以下のような事項が挙げられます。
①贈与する相手(受贈者)とその者の経済的事情
②贈与する期間
③税法上の特例の活用
④生前贈与財産の選択
⑤贈与にかかるコスト
贈与する相手(受贈者)の検討事項
①受贈者の人数
贈与税の基礎控除を利用し、さらに贈与税の超過累進税率の影響を和らげるためにも、受贈者の人数は多い方が望ましいと言えます。
②孫への贈与
孫への贈与で、相続税の課税を1回回避することが可能です。
③受贈者の贈与税の経済状況
受贈者は贈与税の納税義務者となるので、受贈者が贈与税を負担できるかを考慮しなければなりません。
贈与する期間
一度に多額の贈与を行うと、高い贈与税を課される恐れがあります。従って、生前贈与は長い期間をかけて繰り返し行うほうが良いと言えます。もっとも、これが定期金の贈与と評価されないように配慮する必要があります。定期贈与と評価されると、例えば、1,000万円を贈与する旨の契約書を作り、100万円を10年間で贈与を行った場合でも、当初の年に1000万円の贈与があったものとして課税されてしまいます。
具体的には、下記の点を注意して進める必要があります。
①贈与契約書を作成する。
②必ず銀行口座を通して行う。
③贈与税の申告書を贈与を受けた年の翌年2月1日から3
月15日までに提出する。
④贈与金額を毎年変える。
⑤贈与時期を毎年変える
生前贈与資産の選択
(1)将来評価額が上昇しそうな財産から優先して贈与する
(2)財産の評価額を引き下げてから贈与を実行する
(3)時価と相続税(贈与税)評価額の乖離している財産を贈与する
(4)数年以上に分けて贈与を繰り返す場合は、金融資産(現金預金・有価証券等)の贈与が実行しやすい
親子間の生前贈与が後々、税務署から問題視(否認)されないようにするには、契約書の作成と贈与財産を受贈者の管理下に置くことが重要です。
(1)書面による贈与
贈与は口頭での約束だけでも成立します。しかし、贈与者の死亡後、書面によらない口頭での贈与では贈与があったこと自体を証明することが困難となります。後日の紛争を防止するためにも贈与契約書を作成するのが望ましいでしょう。
(2)受贈者の管理下におくこと
贈与された現金が受贈者において自由に使える状態になければ、贈与があったとはいえなくなります。そのためには、①受贈者の生活圏に所在する金融機関の振込口座に振り込む、②贈与された現金を他の金融商品に切り替える場合や満期の更新等は受贈者本人が行う等、受贈者自身が管理することが肝要です。