相続分の譲渡・放棄
遺産分割事件の当事者が数十名以上となると、利害関係が大きくなり過ぎ、また相続人全員で実質的な協議を行うことができず、いつまでたっても合意に至らないということがあります。また、相続問題に関わりたくないという相続人もいるでしょう。こういった場合、生前、被相続人との関係が希薄だった相続人やもともと相続分が少ない相続人に相続分の譲渡、放棄をしてもらうことで当事者を整理することがあります。
相続分の譲渡
相続分の譲渡とは、遺残全体に対する共同相続人の有する包括的持分又は法律上の地位を譲渡することを言います。多数当事者の事案において、相続分を譲渡することにより当事者を整理する場合、内縁の配偶者など本来相続人として扱ってもいい第三者に対し相続分を譲渡することによって第三者を遺産分割に関与させる場合等に用いられます。
その主体、方式に制限はありませんが、裁判実務においては、譲渡人の真意の確認のため、実印を押印した譲渡証書及び当該事件から脱退する旨の脱退届に印鑑証明書を添付させて、家庭裁判所に提出させ、手続から脱退させます。
相続分の放棄
相続分の放棄は、共同相続人がその相続分を放棄することをいいます。相続分の放棄は、相続放棄と異なり、期間の制限はなく、被相続人の債務は承継することに注意が必要です。
相続分の放棄も譲渡と同様に、真意の確認のため、実印を押印した相続分放棄書及び脱退届に印鑑証明書を添付させて、家庭裁判所に提出させ、手続から脱退させるのが、裁判実務です。