営業権とは
営業権とは、営業用財産を構成している動産、不動産、債権、無体財産権などの権利とは評価し尽せない得意先関係、仕入れ先関係、営業の名声、地理的関係、営業上の秘訣、経営の組織、販売の機会など営業に固有の事実関係であって財産的価値のあるものを言います。
営業権の権利性
判例は、法人税法上の営業権につき「その企業の長年にわたる伝統や社会的信用、立地条件、特殊の製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性などを統合した、他の企業を上回る企業収益を獲得することができる無形の財産的価値を有する事実関係」と判示しています(最判昭和51年7月13日)。
のれん
この営業権と同じことを意味するものとして「のれん」があります。「のれん」については、「得意先関係、仕入先関係、営業上の秘訣、名声、経営組織など、長年営業している店舗の使用によって得る営業上の無形的利益であり、これがあると、営業財産はその各構成要素の単なる集合よりも高い独自の財産的価値をおびる」と一般的に説明されています。
遺産分割における営業権の取扱い
判例によれば、営業権の権利性は否定されることから、営業権そのものを遺産分割の対象として特定の相続人に取得させることはできません。しかし、特定の相続人が被相続人の営業を引き継ぐ場合に、当該相続人は営業用財産を一括して相続し、それとともに(事実関係である)営業権をも事実上承継することになります。その際、営業権が相当な価格の評価がつくときには、これを遺産分割上も考慮する必要があります。
営業権の評価
営業権あるいは「のれん」とは、企業の超過収益をあげる能力とされていますので、過去において、相当期間継続して現実にそのような超過収益をあげていたものでなければなりません。
また、そのような超過収益をあげることができた原因も問題となります。もし、それが営業主である被相続人の個人的能力、あるいは顧客や取引先などから受けていた個人的な信頼感に原因があったとすると、それは営業主の死亡によって、消滅し、もはや相続財産として評価することはできなくなります。
このような営業権の評価をめぐり、遺産分割協議で同意できない場合は、営業権の価値について専門家の鑑定を求めたうえ、最終的には裁判所の判断を仰ぐことになります。